で。
リチャードとエリザベス中心に散々語っておいてなんですが。
この『リチャード三世』
銀粉蝶さんなしでは語れない。
蜷川版マーガレットは幽霊のごとくあまり動かず
呪術師のように威厳を持って呪いの言葉を吐く。
いのうえ版マーガレットは感情のまま。
人間くさく動きまわり恨みつらみを並べたてる。
銀粉蝶さんは「もう黙ってはいられない!」で前面に出てきてからは
劇場全体を完全に手の内に入れてしまった。
そこからは出てくるたびに客席を完全に味方につけてしまい、
リチャードの悪辣ぶりと臣下の連中の小悪党ぶりを浮かび上がらせた。
超怪演、そして超名演。
ヨーク公夫人の
三田和代さん。
息子を息子に殺されて、孫も息子に殺されて。
悲しい中にも強さを見せてくれた。
祝福を望むリチャードに怒りを含む戸惑いの表情。
「私の祈りは敵方の勝利のため」と
毅然と立ち去る凛とした後ろ姿。
絶品です。
この二人の名女優のいいところをぜひ盗んでほしいと思う
久世星佳さんが王妃エリザベス。
したたかさと強さ、そして弱さを上手く出した。
古ちんに対峙できる同年代の女優として
キャスティングされたんだろうけど
役目はきっちり果たしたね。
久しぶりに久世姐さんの芝居を堪能したーって感じ。
三人のシーンは見応え充分だったねぇ。。
もう一人の女優さん。
安田成美さん。
アンってさ、難しい役のわりに出番少ないし
たいしてオイシイ役じゃないからね。。
ものすごキレイなんだけど、
声がコントロールできなくて苦労してる感じでしたな。
長いブランクの壁はキツかったねぇ。。
で、男優陣。
ワンシーンながら上手さが際立つのがエドワード四世の
久保酎吉さん。
出番が少なすぎるのと怒濤の二幕のせいで
忘れがちになるエドワード王だけど、
弟クラレンス公を死なせてしまったと嘆く
酎吉さんの演技は賞賛されるべきだと思う。
大森博史さんのバッキンガム公も良かった。
小悪党の極みみたいなバッキンガムを軽妙に演じてて大森さんらしかった。
実は
榎木孝明さんのスタンリー卿が一番ズルイのかも。
あまり表情を変えずに演じた榎木さんは上手いけど
やっぱり女優陣の強烈さに負けてしまったかな。。
ヘイスティングス卿の山本亨さんもクラレンス公の
若松武史さんも
リヴァース卿の
天宮良さんも上手いんだけど早めに死んじゃうしなぁ。。
挙げていくとやっぱ豪華だよねぇ、キャスト。
フランスに亡命してフランスナイズされて
金髪で帰ってきたリッチモンド伯の
川久保拓司くん、
なんとなくマザコンちっくに見えちゃう
森本亮治くん、
リチャードの腹心の
増沢望さんも
西川忠志さんも悪くはないんだけど
男優陣が女優陣に押されてしまった感は否めない。。
で、役者生活25周年おめでとうの
古田新太氏。
古ちんのリチャードはもうあれでいいような気もしてきた。
3回観るうちに慣れちゃったのかなぁ。
柄には合ってるからかもなぁ。
週1でテレビの深夜生番組持ってて、
公演中もやってるのを見た時に
「明日の台詞大丈夫かなぁ。。」と思ったけど。
体力はありそうだし、舞台大好きってのもあるだろうし。
たださ。
これからだんだん歳とっていくんだから
滑舌とかの欠点を克服する努力はしてくんなきゃね。
そんで、もうちょっとしてから古ちんと久世姐で
面白いヤツやってくれんかなぁと。
もちろんいのうえ演出でね。