初のベストセラー作を発表した作家エリックに
浅野和之さん。
靴職人だった父親は癌で余命いくばくもない。
ユダヤ人である彼は、ブルックリンを嫌い
自立するため奨学金でコロンビア大学へ。
今はマンハッタンに住んでいる。
入院中の父親との微妙な関係、ラストの死んでしまった父親との会話。
そこに至るまでのエリックの細かい心理描写を
膨大な台詞とともに淡々と表現する浅野さんはスゴイ。
「ダム・ショー」でやりにくそうだったのと比べて
浅野さんらしい人間味ある芝居が観られたのがうれしい。
エリックの父マニーは
織本順吉さん。
亡くした妻への愛情たっぷり。
ブルックリンを出て行ったエリックに対しても愛情はあるけど
ちょっとひねくれた接し方しかできない。
エリックがロスに行ってる間に急変して亡くなってしまう。
ユダヤ人の頑固な、でも陽気な父親が織本さんにはまってた。
死んでしまった後、登場するのは幻か霊かあいまいだけど
あれは霊だと思いたい。
エリックの本を全部読んだと信じたいもん。
スーッと捌けていく後姿が絶品。エリックが本気で泣いてたもんなぁ…
エリックの幼馴染みのアイラ、
石田圭祐さん。
敬虔なユダヤ教徒。
たぶんエリックが子供の頃一番なりたくなかったタイプのユダヤ人なんだろうな…
ちょっとコンプレックスも抱えるアイラに
いかつい外見の石田さんがなぜかはまってる。
さすが文学座、やっぱし上手いや。
エリックの妻ニーナの神野三鈴さん。
神野さん、またしても情緒不安定な役どころ。
まあ似合うしキレイだし上手いからいいけど。
エリックと別れたいのは才能に対する嫉妬も含んでるのね。
複雑な女性をちょっとトーンを落として演じる神野さんは最高です。
残念だったのが、エリックがロスで知り合って
ホテルの部屋まで来てしまうUCLAの院生アリソンを演じた
月影瞳さん。
「ビバリーヒルズ青春白書」のドナみたいなノーティさと
ちょっと影を感じさせる色気が必要な役なのに
硬質な感じで、エリックが部屋に誘いそうな雰囲気がない。
ていうか、それ以前にアメリカ人に見えないし
UCLAの院生には無理がありすぎ。
芝居も、いかにも台詞しゃべってますって感じで
このシーンだけつまんなかった。
いまちょっとパラパラと小冊子めくってたら
「あわれ彼女は娼婦」にも出てらっしゃるのね…
まったく記憶にない…
映画のプロデューサー?メラニーの
阿知波悟美さん。
コメディリリーフぽいポジションだけど
間がいいし、台詞も明瞭だし。
いかにもやり手のプロデューサーらしい、
相手を自分のペースに巻き込む豪快さも素晴らしい。
阿知波さんはいつも安心して観れるなぁ。
パッパ~ってのが耳に残ってます。
主役候補俳優タイラーの今拓哉さん。
ジャベールとはうって変わってノリの軽い白人。
かと思いきや、「ブルックリン・ボーイ」映画化には
かなりの思い入れがあるらしい。
脚本の読み合わせでは真剣に台詞を喋り始めて
エリックを引きずり込む。
今さんて意外と上手いじゃないの~。
ミュージカルばっかりやってる人だから偏見あったかも。
ごめんね、今さん。
一部不満もありましたが、他は大満足。
終演後、ロビーに演出のデールさんと翻訳の平川さんがいらっしゃった。
サインもらいたかったけど、声かけられなかった…orz