MYTHとは神話、作り話、架空の人という意味だそうで。
登場する男性4人すべてが何らかの形でMYTHの世界に関わっている。
大まかなストーリーは
自分と母親を捨てた父親の死を受けて、アールデコ様式の館にやって来た
息子と友人、そして父親に雇われていた弁護士。
遺産相続の話をする弁護士に息子は
「父親に愛情はないし、記憶もない。物を持てない暮らしをしているからすべて処分してくれ」と依頼する。
友人と弁護士が場を外し、息子が一人になった時、死んだはずの父親が現れる・・・
息子を演じる佐藤アツヒロさん。
実は前半、友人とのやりとりで、台詞が棒読み気味だなぁと思ってたんですよ。
でも友人というのが実は頭の中で作り上げた妄想だった、というのがわかった時点で
あれはわざと棒読み風にしてたのかなと。いうのは深読みでしょうか?
母親も早くに亡くし天涯孤独、繊細で愛情に飢えた息子にハマってました。
父親は現代女形でも有名な
篠井英介さん。
色白で細身の篠井さんは現実感がない霊(とは違うと思うけど)にぴったり。
演技も硬軟自在で素晴らしい。
生前は詐欺で刑務所に入ったこともあり、
その後宝くじで当たった三億から財を成し、最期は肝臓癌で死んでしまった。
なんとも波乱万丈な人生なんですが。息子に対して愛情はあったんですよ。
現実から目を背けて生きる息子を救うために現れたようなもんですから。
現れた父親も、実は息子の妄想なのかもしれない・・・あるいは願望・・・
父親と息子の関係というのは母娘より複雑で深いのかも。
弁護士は
陰山泰さん。
有能で温かみもある。弁護士は息子に問われるまま家族の話をする。
妻と息子二人の生活、息子と自分との関わり方など。
しかし雇い主の父親は、弁護士の息子は実は死んでいることを息子に教える。
息子の死を受け入れられないまま、弁護士もまたMYTHの世界で生きている。
陰山さんは冷静さの裏の闇を押し付けがましくなく表現して秀逸。
息子の友人に
中山祐一朗さん。
息子とのやりとりはコミカル。しかし言ってる事はかなり鋭い。
弁護士には見えなかった父親の姿も友人には見える。
観客がなんで?と思っていると、父親が友人の真実を暴いていく。
友人は息子が作り上げたMYTH(架空の人)で、
友人の言葉は息子の心の声であり、言って欲しかった言葉だったということが
わかってくる。
中山さんは声が高いせいもあって実体のないMYTHに違和感がない。
結局どこまで現実なのか・・・あいまいな線引きがいいです。
きっと誰にも自分の作り上げた仮想空間というものが大なり小なりあるはず。
そして現実との線引きもそんなにはっきりしてるわけじゃない・・・
円形劇場という凝縮された空間で、MYTHの世界にどっぷり浸れて
充実した一時間半でした。
男性4人のカンパニーはもちろん、脚本演出のスズカツさん、
照明や衣装など素晴らしい仕事をしたすべてのスタッフさんに大拍手。
できれば映像化してほしいけど、アツヒロくん出てるから無理なんだろうなー。